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街とお店で

あと三十円

どうも、
チャージ残高との読み合いに毎回負ける女、ミサキです。

コンビニのレジ。

電子マネーで払う。

ピッ。

エラー音。

残高不足。

金額を見る。

不足、
三十円。

三十円。

惜しい、が一番きつい。

これが五百円足りないなら、
潔く現金を出せる。

三十円だと、
一瞬
「なんとかならないか」
と考えてしまう。

なるわけがない。

でも考える。

その一瞬の思考のあいだ、
店員さんは黙って待ってくれている。

やさしい沈黙。

この沈黙が、
地味に効く。

チャージしますか、
と聞かれる。

します。

いくら、
と聞かれる。

ここで私は毎回、
判断を間違える。

千円。

そう答える。

三十円足りなかっただけなのに、
千円入れる。

そして今日から
また、
残高との読み合いが始まる。

九百七十円という
中途半端な軍資金を持って。

家に帰ってから思う。

三千円入れておけば、
しばらくこれをやらなくて済む。

わかっている。

わかっているのに、
毎回千円と答える。

たぶん私は、
大きい数字を先に払うのが
なんとなく怖い。

損はしていない。
どちらも同じ金額を使う。

なのに、
千円の方が
「まだ引き返せる」気がする。

引き返す予定は、
一度もない。

どうも、
残高とだけは

いつまでも真剣勝負している女、
ミサキでした。

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