壁
どうも、
視力だけでなく
判断力も裸眼になる瞬間がある女、ミサキです。
今日は、コンタクトを落とした話。
だいたい、落とした瞬間から空気が変わる。
洗面所で外そうとしただけ。
いつもの動作。
いつもの流れ。
なのに指先からスルッといった。
「……あ」
音がない。
床に落ちた感じもしない。
視界ももう半分ぼやけてる。
まず下を見る。
ない。
床、確認。
ない。
洗面台の縁。
ない。
この時点で嫌な予感しかしない。
コンタクトって、落ちると存在を消す。
リビングに声をかける。
「ちょっと待って、今、動かないで」
理由は言わない。
言う前に説明が必要になるから。
夫、
「え? なに?」と言いながら止まる。
子ども、
なぜかピタッと固まる。
事情は分かってないけど、
緊急性だけは察してる。
床を這うように探す。
視界は悪い。
集中だけがやたら高い。
夫が言う。
「もしかして、ほっぺについてない?」
触る。
ない。
次に疑うのは服。
パジャマの袖。
肩。
胸元。
ない。
ここで一回、絶望する。
もう一枚あるけど、
今日に限ってそれは使いたくない。
夫がふと、
「壁じゃない?」
壁?
そんなわけ。
と思いながら見る。
ある。
なぜか、
壁に貼り付いてる。
高さ、
目線。
どういう落下ルート?
全員、無言。
誰も理由を考えない。
考えても答えがないから。
ティッシュでそっと取る。
壁から、ペロッ。
まだ使えるかどうか、
一瞬だけ迷う。
迷った末、
使う。
洗う。
めちゃくちゃ洗う。
装着。
見える。
普通に見える。
子どもが聞く。
「どこにあったの?」
「壁」
「なんで?」
「わからん」
これで終了。
コンタクトって、
床に落ちない。
なぜか、
垂直な面を選ぶ。
壁。
家具。
時には、家族。
以前、
子どもの背中にくっついてたことがある。
本人、最後まで気づかなかった。
どうも、
コンタクトを落とすと
家族全員を巻き込む女、
ミサキでした。