目的地はまだ遠い
寄り道の才能だけが突出している女、ミサキです。
ホームセンターに、
電球を一個買いに来た。
一個だけ。
入口で、
夫が「じゃあ工具のとこ見てる」と言って
早々に離脱した。
私は電球コーナーへ、
まっすぐ向かうつもりだった。
つもりだった。
三歩目で、
鍋つかみが目に入る。
くすんだ緑で、
やたら分厚い。
かわいい。
カゴに入れる。
次の通路で、
半透明の収納ボックスが積んである。
「これがあれば、
洗面所の下がすっきりする」
たぶんしない。
でも、
するかもしれない。
カゴに入れる。
その先で、
延長コードが特価になっていた。
今いらない。
今いらないけど、
いる日が必ず来る。
カゴに入れる。
気づいたら、
園芸コーナーにいた。
電球からいちばん遠い。
そこで夫が合流してきて、
カゴをのぞいて言った。
「電球は?」
……買ってない。
一番の目的だけが、
きれいに残っていた。
ではまた。
電球一個を買いに来て、
電球以外が三つ入っていた。
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