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街とお店で

覚えられた

どうも、
顔を覚えられた店に行きづらくなる女、ミサキです。

商店街の、
小さなパン屋。

三回くらい行った。

四回目に行ったとき、
店主が言った。

「いつもありがとうございます」

うれしい。

まぎれもなく、
うれしい。

うれしいのに、
その日から
少しだけ入りにくくなった。

なぜか。

覚えられたということは、
次に行かなかったことも覚えられる
ということだからだ。

そんなわけがない。

店主は毎日何十人と接客していて、
私が一週間来なくても
たぶん何も思わない。

わかっている。

わかっているのに、
一週間空くと
「久しぶりだと思われるかな」
と考えてしまう。

考えて、
足が遠のく。

遠のくと、
もっと行きにくくなる。

これは完全に私の中だけの話で、
店には一ミリも関係がない。

二週間ぶりに、
勇気を出して行った。

店主は、
前と同じ顔で

「いらっしゃい」

と言った。

久しぶり、
とは言われなかった。

覚えられていないのか、
気を遣われたのか、
単に忙しかったのか。

わからない。

わからないまま、
クリームパンを買って出た。

外に出て、
少しほっとしている自分がいた。

ほっとしたということは、
やっぱり緊張していたということで、

パンを買うだけで
緊張していたことになる。

どうも、
好意を受け取るのに

毎回準備運動がいる女、
ミサキでした。

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