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からだのこと

左右の交渉

どうも、
眉毛の左右を一度も和解させられない女、ミサキです。

朝。

洗面所の鏡。

右の眉を描く。

いい。

われながら、
いい。

角度も、
太さも、
思ったとおりに決まった。

問題は、
ここからだ。

左を描く。

……違う。

明らかに違う。

同じように描いたのに、
なぜか少し
下がっている。

直す。

左を上げる。

上げたら、
今度は左の方が濃くなった。

右を足す。

足したら、
右が太くなった。

左を足す。

これを三往復すると、私の眉は最初の二倍になる。

鏡から少し離れて見る。

離れると、
そんなに悪くない。

近づく。

やっぱり違う。

ここで気づく。

そもそも、
私の顔の左右が
最初から対称ではない。

眉が悪いのではなく、
土台がずれている。

土台に合わせて描いたら、
たぶん左右非対称の眉が正解になる。

でも私は、
毎朝
対称にしようとしている。

勝てない相手に、
毎朝挑んでいる。

十分経った。

結局、
最初に描いた右がいちばん良かった。

左を、
右に寄せる形で妥協した。

家を出る。

パート先の更衣室で、
もう一回鏡を見る。

……そんなに気にならない。

一日を通して、
誰にも何も言われなかった。

後日、
家族で撮った写真を見た。

自分の顔が、
小さく写っている。

眉を確認する。

……わからない。

小さすぎて、
左右差どころか
眉があるかどうかも怪しい。

十分かけたものが、
写真では一ピクセルも主張していない。

それでも明日、
また十分かける。

写真のために
描いているわけではないので、
これはこれでいい。

たぶん、
鏡の中の自分と
毎朝きちんと会うための時間なんだと思う。

どうも、
毎朝十分かけて

誰も見ていない対称性を追う女、
ミサキでした。

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