取り寄せ
パート先の本屋で、
常連さんの注文を
だいたい頭に入れていると
思っている女、ミサキです。
「取り寄せてた本、
来ました?」
聞かれた瞬間、
反射で「はい」と言った。
奥のカウンターに向かいながら、
あれ、
と思う。
取り寄せ本、
今週は二件あった。
一件は
この人。
もう一件は、
たしか
帽子のおじさん。
……あれ、
どっちがどっちだっけ。
棚を見る。
一冊しかない。
タイトルを見る。
帽子のおじさんの本だった。
「すみません、
こちら来てるのは
別の方の分でした。
お客様の分は
まだ届いていなくて」
常連さんは
特に気にせず
「あら、そう」
とだけ言って
帰っていった。
レジに戻る。
「はい」って、
なんで即答したんだろう。
たぶん、
「わかってる店員」
に見られたかった。
夕方、
帽子のおじさんが
本を取りに来た。
今度は
ちゃんと棚を見てから
「はい、来てます」
と言った。
一日一回学習する。
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