光るだけ
どうも、
エレベーターの「閉」を押さずにいられない女、ミサキです。
ショッピングモールの、
三階。
エレベーターに乗る。
扉が、
開いたまま止まっている。
閉まる気配が、
ない。
「閉」を押す。
ボタンが光る。
閉まらない。
もう一回、
押す。
光ったまま。
知っている。
「閉」を押しても、
閉まる速さは
変わらないらしい。
どこかで読んだ。
読んだのに、
押している。
以前、
「閉」を連打している人を見て、
心の中で思ったことがある。
せっかちだな。
今の私が、
それだ。
三回。
四回。
光るだけ。
でも、
光ると
押した気がする。
七回目のとき、
通路の向こうから
おばあさんが歩いてくる。
間に合うか、
微妙な距離。
私は
「開」を押す。
さっきまで
「閉」を連打していた指で。
おばあさんが乗る。
「ありがとうございます」
いえ、
と言う。
私は、
また「閉」を押す。
八回。
九回。
十回。
十一回。
閉まらない。
おばあさんが、
「閉」を、
一回だけ押した。
扉が、
すっと閉まった。
……閉まった。
おばあさんが、
こちらを見て
にこっとする。
ではまた。
十一回は、
光っていただけだった。
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