手で持ちます
どうも、
五円を払えない女、ミサキです。
コンビニのレジ。
お茶。
おにぎり二つ。
ヨーグルト。
チョコ。
卵サンド。
五点。
「袋はご利用ですか」
「あ、大丈夫です」
言ってしまった。
言った瞬間は、
気持ちよかった。
エコの人だ、
私は。
レジを離れる。
右手に、
お茶。
左手に、
おにぎりが二つ。
脇に、
卵サンド。
ヨーグルトは、
おにぎりの下。
チョコは、
財布を持っていた指の間。
財布は?
しまう手が、
ない。
出口のドアを、
背中で押す。
後ろ向きに、
外へ出る。
レジの店員さんと、
目が合う。
会釈する。
おにぎりが、
一つ傾く。
三歩目で、
ヨーグルトが滑った。
しゃがむ。
拾う。
その間に、
チョコが落ちる。
拾う。
卵サンドが、
脇から抜ける。
通りかかった人が
拾ってくれる。
「すみません」
お辞儀をする。
お茶が落ちる。
ここで、
気づく。
五円の袋は、
まだ店の中にある。
戻る?
戻る自分を想像する。
「やっぱり、袋を」
店員さんの、
一瞬の間。
一度断った店に、
袋を買いに戻る。
無理だ。
歩いて帰る。
家まで、
四分。
十分かかった。
手で持ちます。
と言ったのは、
私だ。
玄関で
全部を床に置く。
両手が、
赤い。
夫が見て言う。
「袋もらえば良かったのに」
ではまた。
ヨーグルトの蓋は、
少しへこんでいた。
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