返却口
どうも、
返却口を探して一周する女、ミサキです。
ショッピングモールの
フードコート。
昼。
一人。
ラーメンを
食べ終える。
丼は空。
スープも、
全部飲んだ。
トレイを持って、
立ち上がる。
返却口。
どこだ。
見回す。
ハンバーガー屋。
うどん屋。
ソフトクリーム屋。
返却口の表示は、
見当たらない。
歩く。
トレイの上で、
丼が
かちゃかちゃ鳴る。
一周。
ない。
聞けばいい。
それは
わかっている。
でも、
「返却口、
どこですか」
と聞いた瞬間、
「そこです」
と指をさされる
未来が見える。
それが怖くて、
二周目に入る。
すれ違う
おじさんと、
目が合う。
この人、
さっきも
すれ違った。
向こうも、
たぶん
そう思っている。
ソフトクリーム屋の前を、
また通る。
店員さんと、
目が合う。
会釈された。
返した。
トレイを
持ったまま。
三周目に入る前に、
足を止める。
店内の全員が、
私の歩く理由を
知っている気がした。
振り返る。
私が食べていた
テーブル。
その、
真後ろ。
柱の横に、
黒い棚。
「返却口」
ずっと、
背中を向けていた。
返却口。
返す。
がちゃん。
何もなかった顔で、
出口へ向かう。
二歩目で、
気づく。
傘を、
席に置いてきた。
戻る。
三歩。
一周は、
あんなに長かったのに。
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