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パート先のこと

針が一本

どうも、
レジ横のホッチキスに信頼を置きすぎる女、ミサキです。

書店のレジ。

予約票を
三枚、
綴じたい。

ホッチキスを
取る。

カチン。

紙の端が、
少し浮いた。

針は、
出ている。

でも、
曲がっていない。

裏返す。

針が、
一本、
きれいに
伸びたまま
紙の裏から顔を出している。

曲がるはずの
針が、
曲がらなかった。

お客さんが
待っている。

「少々お待ちください」

指で
針を押す。

刺さる。

小さく
「あ」と言う。

お客さんが
一歩、
下がる。

血は出ていない。

出ていないが、
痛い。

気を取り直して
もう一回。

カチン。

音が、
軽い。

紙を見る。

何も
刺さっていない。

空打ちだ。

ここで、
「針が切れた」
と気づく。

引き出しを
開ける。

替え針の箱。

空。

空の箱が、
引き出しの
一番手前に
ある。

針が一本。

そう言えば、
先週。

同僚が言った。

「あと一回分しか
入ってないよ」

聞いた。
聞いて、
「じゃあ、あと一回は
大丈夫」
と思った。

その一回が、
さっきの
曲がらない針だった。

予約票は、
結局
クリップで留めた。

お客さんが
受け取る。

「ありがとうございます」

いえ、
と言う。

閉店後。

店長が
新しい替え針の箱を
置く。

「ここに入れとくね」

引き出しの
一番手前。

空の箱の、
上に。

ではまた。

空の箱は、
まだ引き出しにいる。

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