ミサキブログ 一覧へ
家の中の小事件

次の家まで

どうも、
回覧板を持ったまま立ち止まる女、ミサキです。

夕方。

ポストに、
回覧板が入っていた。

「お隣の次に回してください」

ここまでは、
わかる。

問題は、
「次」がどこか。

うちの班は、
七軒。

順番は、
どこかに
書いてあるはず。

回覧板の
裏を見る。

表を見る。

挟んである紙を見る。

班の名簿。

縦に、
七つの名前。

うちは、
上から四番目。

つまり、
五番目の家に
回す。

五番目。

……どこ。

顔は、
わかる。

表札は、
覚えていない。

ここで気づく。

私は五年住んでいて、
五番目の家の
前を通ったことが
ない。

通ったことが
ないはずはない。

通っているのに
見ていない。

名簿の名前を、
声に出してみる。

「……さん」

聞き覚えは
ある。

とにかく、
外に出る。

回覧板を
胸の前で持って、
道を歩く。

五番目の家。

たぶん、
あそこ。

たぶん。

次の家まで。

たった三十メートルが、
遠い。

門の前で、
表札を見る。

違う名前。

一軒、
行き過ぎていた。

戻る。

隣の家。

チャイムを押す。

「はい」

「回覧板です」

「あ、ありがとう」

「こちらこそ」

何が、
こちらこそなのか。

家に戻る。

玄関の前で、
子どもが言う。

「ママ、さっき、
同じ道を
二回通ったよ」

見られていた。

ではまた。

五番目の家は、
うちの、隣だった。

1 views