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買ったもの・比べたもの

香りの記憶

どうも、
香りを文字で選んで外す女、ミサキです。

ドラッグストアの、
洗剤の棚。

柔軟剤が、
ずらりと
三十種類くらい並んでいる。

パッケージを
順番に見る。

「ふんわり
フローラルブーケ」

「晴れの日の
やさしい石けん」

「ホテルライクな
上質の香り」

全部、
いい匂いなのは
わかる。

ただ、
文字からは
匂いが来ない。

サンプルの
試し嗅ぎが
置いてある棚は、
この店にはない。

隣で、
同じ年くらいの
女性が
さっと一本取る。

迷いなく
カゴへ。

その背中を、
三秒見る。

真似したい。

でも、
その人の
洗濯物の匂いは
私には
わからない。

結局、
ひとつ選ぶ。

香りの記憶。

「石けんの香り」
と書いてある
青いボトル。

子どもの頃の
実家の
洗面所の匂いが
するといいな。

帰宅して、
洗濯機に入れる。

乾いた
タオルを
顔に当てる。

……全然、
石けんではない。

甘い。

すごく、
甘い。

石けんの
「せ」の字も
ない。

焼き菓子の
店の前みたいな
匂いがする。

翌日、
パートに行く。

更衣室で
同僚が
鼻をひくつかせる。

「ミサキさん、
なんか
いい匂いしますね」

「え、
柔軟剤、
変えたんです」

「何の香りですか?」

「……石けん、
のはずでした」

同僚が
首をかしげる。

「マフィンっぽいですよ」

ではまた。

石けんと書いてあっても、
買ったのは
マフィンだった。

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