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パート先のこと

厚みで決まる

どうも、
指先だけ十年選手になっている女、ミサキです。

本屋のレジで、
カバーを折る。

厚い本と、
薄い本では、
折る位置が違う。

当たり前の話だ。

でも私は、
その位置を
一度も測ったことがない。

本を受け取る。
持った瞬間、
手が勝手に決めている。

ここ、
と。

考えていない。
考えていないのに、だいたい合っている。

たまに新人さんに聞かれる。

「どのへんで折るんですか」

答えられない。

「なんとなく」
としか言えない。

言ってから、
それでは教えたことにならないと気づいて、
慌てて本を持ち直す。

厚みが、
このくらいなら。

説明しようとした瞬間、
今度は手が止まる。

考えると、
できない。

さっきまで一秒で折っていた場所が、
急にわからなくなる。

結局、
新人さんの前で一回失敗した。

折り返しが、
短い。

見本として、
最悪だった。

そのあと、
何も考えずに次の一冊を折ったら、
ぴったりだった。

私の手は、私より賢い。

でもこの手、
家では包装紙一枚まっすぐ切れない。

同じ手なのに。

柄のあるカバーだと、
話が変わる。

うちの店のカバーには、
うっすら模様が入っている。

折ったとき、
その模様が
表側でつながっていると気持ちがいい。

つながっていなくても、
誰も困らない。

お客さんは
たぶん一生気づかない。

それでも、
つながる位置で折りたい。

厚みで決まるはずの位置を、
柄のために
一ミリずらす日がある。

その一ミリを、
私は誰にも報告していない。

ではまた。
うちの手は、職場でだけ優秀です。

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