一合の線
どうも、
計量カップの線を一度も信じきれていない女、ミサキです。
米びつの中に、
プラスチックの計量カップが入っている。
内側に、
線が引いてある。
「一合」
はっきり書いてある。
親切に書いてある。
なのに私は、
その線まで入れたあと、
必ず一回、
カップを目の高さまで持ち上げる。
そして、
横から見る。
横から見て、何がわかるんだろう。
わからない。
一度もわかったことがない。
それでも見る。
見たあとで、
だいたい米を少し足す。
理由は無い。
「なんか少ない気がする」だけ。
この「気がする」に、
うちの家族は十年以上つき合わされている。
炊き上がる。
夫が食べる。
「ちょっと柔らかくない?」
そりゃそうだ。
水は線どおりで、
米だけ足したんだから。
でも私はここで
「ごめん、足した」
とは言わない。
言わずに、
次から気をつけようと思う。
そして次も足す。
線は、
たぶん正しい。
正しいものを疑い続ける体力だけ、
私にはある。
実家で、
母が米をとぐのを見たことがある。
カップに入れて、
そのまま、
すっと鍋へ。
横から見ない。
足さない。
一秒で終わった。
聞いてみた。
「それ、ちゃんと一合?」
「知らん。いつもこれ」
知らないらしい。
知らないのに、
実家の米はいつもちょうどよかった。
私は線を信じきれず、
母は線を見てすらいない。
なのに炊き上がりは、
向こうの勝ちだ。
たぶん、
疑っている時間が
そのまま水加減を狂わせている。
ではまた。
一合は一合。私が決めることじゃない。
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