手を下ろすタイミング
どうも、
手の下ろしどきがわからない女、ミサキです。
実家からの帰り。
玄関の前で、
母が手を振っている。
車に乗る。
シートベルトを締める。
窓のボタンを探す。
助手席の窓を、
全開にする。
夫が、
子どもが、
「ばいばーい」と言う。
私も、
手を振る。
母も、
振り返す。
車が、
ゆっくり動き出す。
母が、
小さくなる。
ここからが問題だ。
いつ、
手を下ろすか。
下ろすのが早いと、
冷たい。
遅いと、
延々と続く。
向こうが下ろすまで、
こちらは下ろせない。
でも向こうも、
こちらが下ろすまで
下ろさないかもしれない。
お互いに、
待っている。
私が下ろす。
母が、
その瞬間を見ている。
「あ、もう下ろした」
そう思われる。
それは、
避けたい。
角まで、
二十秒くらい。
手を下ろすタイミング。
腕が、
だるくなってくる。
窓の風が、
手のひらに当たる。
ここで一回、
大きく振る。
そして曲がる。
見えなくなる。
私は、
まだ振っていた。
窓の外。
誰もいない塀に向かって。
夫が前を向いたまま言う。
「もう見えないよ」
下ろす。
腕の内側が、
少し熱い。
夜。
母からメッセージが来る。
「無事に着いた?
最後まで手を振ってたら、
腕が疲れた」
ではまた。
「先に下ろして」と、
どちらも思っていた。
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