向きが三回
夜。
スマホの電池、
十二パーセント。
ケーブルを持つ。
差す。
入らない。
逆か。
ひっくり返す。
差す。
入らない。
……逆じゃなかったのか。
穴を、
覗く。
暗い。
電気をつける。
夫が
寝返りを打つ。
消す。
また暗い。
もう一回、
ひっくり返す。
入った。
ぴこん。
充電が始まった。
ここで、
毎回思う。
今の向き、
一回目と
同じじゃない?
同じ向きで
入らなかった。
今、
入った。
つまり私は、
入らない向きで
一度も
試していない可能性がある。
確かめるには、
一回抜いて、
もう一回
差すしかない。
抜く。
差す。
入らない。
ここで気づく。
今のは、
確かめたんじゃない。
回数を、
一回
増やしただけだ。
ひっくり返す。
入った。
ぴこん。
数える。
入らない。
入らない。
入った。
入らない。
入った。
五回。
電池は、
十一パーセント。
差す前より、
減っている。
私の充電には、
毎回
向きが三回
ある。
今日は、
それを超えた。
子どもが
後ろを通る。
「それ、
どっちでも入るやつだよ」
ケーブルを見る。
端子は、
丸みのある
小さい形。
そうだった。
去年、
買い替えたんだった。
私はこの数分、
向きのないものの
向きを探していた。
ではまた。
「どっちでも入る」に、
二回断られた。
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