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家の中の小事件

最後のひと粒

どうも、
納豆のたれを開ける瞬間だけ緊張する女、ミサキです。

朝。

納豆を、
冷蔵庫から出す。

三個パック。

一個、
外す。

たれは、
一袋に
小さじ一杯もない。

その一杯に、
毎朝、
本気で挑む。

フィルムを
はがす。

たれの袋を
持つ。

ここからだ。

切り口を、
指でつまむ。

引く。

開く。

……開かない。

もう一回、
引く。

開かない。

切り口には、
小さな三角が
ついている。

印の通りに
引いている。

三回目。

爪を立てる。

びっ、
と
横に裂ける。

たれが、
指に飛んだ。

大丈夫。

たれは、
まだ袋に
残っている。

袋を逆さにして、
納豆の上で
絞る。

出た。

出たが、
半分くらい。

残りは、
袋の底の隅に
貼りついている。

最後のひと粒。

指で
押し出す。

出ない。

袋を折る。

出ない。

割りばしで
こそげる。

出た。

納豆を混ぜる。

ご飯にかける。

一口。

……薄い。

その横で、
子どもが
自分の納豆を
開けている。

たれの袋を
つまんで、
ぴっ。

一回で
きれいに開いた。

全部、
出した。

袋の中は、
空っぽ。

「ママ、
たれ残してる」

見られていた。

「残ってない」

「残ってるよ、
ここ」

袋の角に、
小さな一滴。

指で
ぬぐって、
舐める。

母として、
正しくない。

ではまた。

子どもの袋は空で、
私の袋には
まだ入っていた。

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