崩す勇気
どうも、
千円札の残数を秒で数えられる女、ミサキです。
レジの中に、
千円札が何枚あるか。
これは、
常に把握している。
意識していないのに、
なぜか知っている。
七枚くらいになると、
背中がそわそわし始める。
五枚を切ると、
もう他のことが手につかない。
レジの千円札は、私の精神安定剤。
両替に行けばいい。
それだけの話だ。
でも、
両替には
「行くタイミング」がある。
お客さんが途切れた一瞬。
その一瞬を、
ずっと待っている。
待っていると、
不思議と途切れない。
一人終わると、
また一人来る。
しかも、
こういう日に限って
「一万円でお願いします」
が続く。
千円札が、
どんどん出ていく。
四枚。
三枚。
心の中で、
静かにカウントダウンが始まる。
ここで焦って両替に走ると、
だいたいその瞬間に
列ができる。
だから動けない。
動けないまま、
二枚になった。
覚悟を決めて、
声をかける。
「すみません、両替行ってきます」
言った瞬間、
お客さんが途切れた。
いつでも行けたのに、
一番緊張した瞬間に言った。
両替から戻る。
千円札が、
たっぷり入っている。
厚みがある。
この厚みを見ると、
本当に安心する。
安心して、
しばらく気が大きくなる。
一万円札を出されても、
どんと来い、
という気持ちになる。
その気持ちは、
だいたい二時間もたない。
二時間後には、
また枚数を数えている。
数えなくていいと言われても、
たぶん数える。
これはもう、
仕事というより
癖に近い。
ではまた。
私の勇気は、いつも残り二枚から出てきます。
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