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パート先のこと

在庫1

どうも、
在庫の「1」を信じすぎる女、ミサキです。

書店のレジ。

昼前。
お客さんが来る。

「この本、
ありますか」

メモを見せてくれる。
タイトルと、
著者名。

レジ横の端末に、
打ち込む。

出た。

在庫、1。

あります、
と言った。

言ってしまった。

棚番号は、
文庫の、
七列目。

行く。

七列目。

著者名の順に、
指でなぞる。

あ、
い、
う。

そこだけ、
ない。

隙間もない。

左右の本が、
きっちり
肩を寄せている。

頭の中に、
一冊の文庫が浮かぶ。

誰かが手に取って、
別の棚に差し直した。

そういう一冊だ、
と決めつける。

戻る。

「少々お待ちください」

もう一度、
端末を見る。

在庫、1。

1は、
消えていない。

再び、七列目。

今度は
一段下も見る。

上も見る。

隣の列も見る。

児童書の棚まで
歩く。

いない。

お客さんを
待たせて、
三分。

レジに戻る。

「すみません、
見当たらなくて」

「あ、いいです。
ネットで買います」

去っていった。

自動ドアが、
静かに閉まる。

端末には、
まだ
1が出ている。

午後。

レジの下の箱を
整理する。

一番上に、
見覚えのある文庫。

著者名。

タイトル。

今朝、
検品の途中で、
私が一旦置いた一冊。

在庫の「1」は、
ずっと
私の足元にいた。

在庫1。

端末は、
何も
間違っていない。

ではまた。

「在庫、1」は、
棚にあるとは
言っていない。

「あります」と言ったのは、
私だ。

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